スコット マーティン医師は一年以上処方箋を書いていません。
ラスベガにいるおよそ60人ほどいるペインドクターの中では異質な存在です。
”私は麻酔薬の製造者がどのように薬物販売の為にデータを巧妙に取り扱っているのかを知ったのですが、私にはその方法について納得できませんでした。“と彼は言います。
“ラスベガスに引っ越してすぐに、私は麻酔薬の処方箋の交付を完全に中止する大きな決断をしました。”
13年前にミシガン州のフリントで医師として勤務を開始して以来、鎮痛剤の処方にかかる有資格者として、マーティン医師は専門的な見識を急速に広げていきました。
何年もかけて、彼は手に負えない痛みに苦しむガン患者や心的外傷を患っている多くの患者を診察し、治療を施しましたが、がんは治療薬の耐性を備える疾患です。
ラスベガスに引っ越す前、彼は南カリフォルニアで9年間過ごしており、そこで経験は新しい治療方法の選択肢を模索するきっかけとなりました。
カリフォルニアで過ごした期間についてマーティン医師は¨
あなたもきっと、ホリスティック(患部の治療だけでなく、精神や生活環境を含めた総合的な治療を施すことを目的とする治療法)について研究する機会があれば、きっと没頭すると思います“と述べています。
“充実した日々を過ごしたければ、バランスのとれた研修が必要で、ホリスティックと植物療法を理解する必要があります。患者は医師の処方が必要とされる薬に加えて20〜 30種類のサプリメントを組み合わせる事ができます。“
ラスベガスの南西バーレーの事務所で席に腰掛けたマーティン医師はカジュアルな服装で、スポーティなポロシャツを少しだけ襟を立てて着ています。
彼は詳細につき慎重な口調で躊躇することなく、隠し事が無い人間のように、述べ始めました。
マーティン医師は質問に対し憶測で受け答えはしない、実直な対応をする、非常に理想的な医師です。
この45歳の医師は麻酔薬は製薬事業の中で単なる製品ではなく、利益追求と市場調査の名目のもとに操作されているという実態を知っています。
最新のCDC(Centers for Disease Control ad Prevention;疾病対策センター)が公表した数値によると、42,000人以上のアメリカ人がオピオイドの過剰摂取により、死亡しています。
聞こえは悪いですが、この統計の数値は鎮痛剤の服用で一般人も死亡リスクの危険にさらされているという考察がされていないという警告を発しています。
利用可能なデータと研究に基づきマーティン医師は更に年間死亡者数のうち200,000人がイブプロフェンや他のノンステロイド(非ステロイド性抗炎症薬)の服用に関係していると言います。
モトリン(イブプロフェン系の鎮痛剤)を服用すると死ぬだけではなく、血管内膜に損傷を与え血圧を上昇させます。
ついには心発作や心拍数の異常、消化管の出血から死亡してしまうのです。1次症例を引き起こすのは実際にはNSAIDだったのですが、NSAIDは心臓血管異常のリスクを50%引き起こす事実をほとんどの人が知りません。
彼の洞察力はユニークです。
彼は痛みの治療の専門家であるだけでなく、犠牲者でもあります。
この医師は脊椎関節症と呼ばれる珍しい持病を持っているのです。“自分の身体が自分の関節を痛めつけるという面白い病気です。
私は長年この病気を患っていたのですが、自分が知らなかっただけでした。”
2013年に背中に異常を感じたとき、マーティン医師はマラソンのトレーニング中でした。
マーティン医師は大量のイブプロフェンを服用しひどい消化管の出血に苦しみました。“およそ2,3リットルの出血がありました”と彼は回想しています。
マーティン医師はリスクの高い輸血を断った為、衰弱し、内出血した血液を体外に排出させるのに数ヶ月かかりました。
彼はあらゆるNSAIDの治療が施されてたことを知っていましたが、1年以上の間、様々なホリスティック治療の薬を試したのですが、改善が感じられませんでした。
彼はこれらの薬を自主的に研究所で分析してみると、最終的にパッケージに表記されている有効成分の含有量よりはるかに少ない量しか含まれていないものもあり、もしくは全く含まないものもあることが判明しました。
一般の食料品チェーン店で販売されている高額なサプリメントのカプセルは米粉でできているだけで、有効性はありません。
そのため、マーティン医師は彼独自のサプリメントを開発しようと決心したのです。
FDAが承認した工場で製造された、あるサプリメントは適正に正確な成分表がラベルに表示されていたので第三者の研究機関での精密な検査に役立ちました。
彼の製品はPreleveと呼ばれていて、クルクミンを含む薬草を配合したものでした。クルクミンはウコンの有効成分でターメリックに含まれる自然由来の抗炎症薬です。
効果の鍵となる因子は使用する薬草に必ず混じり気が無いこと、水溶性であることでした。この条件を満たせば、有効成分は
体内に効果的に吸収される可能性があると仮定したのです。
クルクミンは1日中摂取できるものですが、水溶性が高くなければ、有効ではありません“とマーティン医師は説明します。
また、マーティン医師はPreleveの有効成分にカンナビジオール(CBD)成分を配合し効能を強化することに興味がありました。
彼の研究を通して医師らは人体が麻酔薬の2倍の量の大麻成分の受容体を有するので麻酔薬に代わり、CBDが痛みを和らげる代替成分の候補になることを知りました。
しかし、クルクミン同様に、カンナビノイドは水溶性ではありません。
“カンナビノイドのオイル状のエッセンスをグラスの水の中へ垂らすと水面に留まることが分かります。”と説明するのはSourceOne Global PartnersのCEOジェシー ロペス氏です。
“人体は有効成分を効果的に吸収するために取り込んだ物質の形状を分解しなければなりません。”
ロペス氏と彼のシカゴを拠点とする会社は、混じり気無しで効能を持つ革新的な水溶性のカンナビジオールを具現する処方を習得したマーティン医師を理想的なパートナーであるとしています。
“これらの我々の技術を使えば、カンナビノイドを消化吸収しやすくします。一度、消費されるとカンナビノイドはすぐに体内に吸収されるように最適な状態になります、”とロペス氏は言います。
最終製品はCBDとは違い、100% THCフリーであることが保証されていて服用者の耐性を高めることができます。
“THCと相性がいい人もいますが、私は医者ですから医療行為で解決したいのです”。
自然界由来のPreleveの抗炎症剤の調合とロペス氏のHempCHOICEを組み合わせて、2人のパートナー達は安全かつ手頃で効果的に、あらゆる痛みの治療を網羅する処方の基盤を確立しました。この処方は非中毒性で副作用もありません。
Releve HempCHOICEはオンラインで販売され、地元の医師や医療業界の対象のため、プライベートブランドのラベル販売されました。
このサプリメントは専門薬を取り扱う薬局やプライマリーケア(かかりつけの医師に初期診療を受けること)の診療所や薬局に在庫として並べられ、好評価を受け実際の使用者からも良い感想をもらいました。
“我々はこの製品でネバダ州の多くの患者達を麻酔薬から解放したのです”とマーティン氏は言います。
“彼らは徐々に麻酔薬の投与量を減らしたくなかったしオピオイド系の合成鎮痛剤であるサボキソンやメサドンの投薬を続けたいとは思っていませんでした。患者達はきちんとした処方を受けたかったのです。これは素晴らしいことです。”
その後マーティン氏はドイツの製薬会社のバイエル社の顧問弁護士から電話を受けました。
出典:Leafly
“その弁護士は私を告訴することを知らせるために電話をかけてきたのです“
弁護士はPreleveというマーティン氏が開発したサプリメント名がバイエル社の製品名Aleveと類似しているため、2つの製品が市場では抗炎症剤として取り扱っているため、誤認の発生させる可能性があると言いました。
お互いのラベルが類似しているようには見えないという事実は問題ではありませんでした。
一つはホリスティックで植物由来の原料で製造していて、もうう一つはナプロキセンというブランド名で化学物質を使用して生産しているものだったからです。
“その弁護士は、「簡単に言うとね、マーティンさん、あなたにはご自身を守るために十分なお金がないですよね」と言いました。確かに彼の言う通りでした。“
マーティン氏には選択肢がなかったのです。
彼がどれほど稼げる医者で、または起業者であってもマーティン氏には年商$410億ドルを稼ぎす世界的に巨大なコングロマリットであるバイエル社と法廷の場で争うほど十分な資金の余裕はありませんでした。
マーティン氏は2017年の年末に自身のサプリメントに関連する商標、著作権、ウェブサイトアドレス,マーケティング用品を全て放棄する同意書にサインしました。そのため、もはやPreleveの存在は許されませんでした。
しかし、マーティン氏のパッケージを別ブランドでリパックし販売することはできなかったのでしょうか。
バイエル社の制約によって、別ブランド名で販売するためには手間がかかったのです。
バイエル社が製品売買に関わる権利関連のリストを仕分けした後、やっとマーティン医師は自ら配合した“NiHerbals”という製品名で、Preleveを売り出した時と同様に顧客の関心を引かないネーミングで販売しました。
しかし、マーティン医師は諦めてはいいません。製品のリニューアル版”Hope-Filles Hemps”は乳がん患者の要望を取り入れて開発されたものです。
彼は、1年間の使用料金を$1で喜んで貸し出すとしています。
彼のチームは製品の取り扱いと品質を確実に守る梱包をしてます。その理由は簡単です。
出典:Leafly
マーティン医師の製品を必要としている人々の手元に確実に届けることはお金稼ぎより最優先される重要事項だからです。
“これはほとんど私の償いなんです。私は長年にわたって麻酔薬の処方箋を発行しました。私は他の医者が診察したがらない重症のガン患者を診察していました。この患者達は処方される医薬品にとても驚いていました。そのため長年、私は眠れずにいました。”とマーティン医師はかたります
“でもそれは罪ではありません”と彼は答えます。”しかし、患者が死んで横たわるベッドの横に立つと、多くの治療ができなかった事、これは悔やまれてなりません。私にはなす術が無かったのです。”
“私が研修医で医者の駆け出しだったころ、痛みは5番目の生命からのサインとされれていました。
カリフォルニア州では私が患者の痛みをケア出来なかったら告訴されたかもしれません。”とマーティン医師は当時の状況を話してくれました。
すべてが変わったのは2016年の3月です。
CDC(疾病対策センター)が拡大するオピオイドの薬害に関してこれまでの処方に対する姿勢を見直す見解を示したのです。その見解とはこれまでの処方のフローであった研究所で製造した薬を鎮痛治療へ抜本的に転換する方策でした。“新しいガイドラインでは麻酔薬を基本的に世界でもっともタチの悪い薬物だったと位置付けています。”とマーティン医師は言います。
彼が製薬会社の代表として講演を行う機会はありましたが、今ではマーティン医師はAscendのような薬剤給付管理会社(PBM)チームの一員として活動することが好きです。合わせて彼らは治療方法の足がかりとして、大麻由来の成分を含む鎮痛剤の普及活動の促進に努めています。
つまり、彼等は医療費用対策としてオピオイドが患者に投薬される1,2週間または、1ヶ月前に第2の選択肢として保険で治療費をカバーできるようにしたいのです。
バイエル社のような製薬会社にはこのアイデアは脅威に思えるかもしれない一方、心臓疾患の治療費用の支出がかさんでいる保険会社には非常に歓迎されるかもしれません。
マーティン医師はもしこの概念が定着するのであれば、この業界に大変革をもたらすかもしれないと、述べています。
“我々は判断基準となる数値が必要でこのアイデアが実現すれば、将来的に医療費用を削減することができると考えています”
次のステップはアメリカ国内の医師達のCBDの恩恵に対する意見を変える事です。
最大の難点は、関連する文献や論文が圧倒的に少ない事と、州政府に対し、臨床実験の安全性を立証する難しさにあります。
“アリゾナ州にトラウマによる脳内損傷の治療にCBDを使用したがっている同僚がいます。彼女は7年間IRB(施設内治験審査委員会)に所属した後、政府は彼女に市場で出回っている粗悪品のCBDの1つを臨床試験の為に使用するよう、強要しました。彼女は使用を強要されたCBDの品質が悪かったので、臨床試験結果はひどいものになるだろうと分かっていました。“とマーティン医師は話します。
ジェシー ロペス氏も問題はすべて似たようなものだと知っています。
“この新しい分野の産業で最も最優先すべきことは、信用に値する臨床試験結果を科学的に裏付けることなのです。”とロペス氏は自身の会社の試みについて説明を続けました。
“我々はドイツやオーストラリアのようにカンナビノイドの取り扱いについて法律で明確な運用基準をもつ国との海外取引をへ進めなければなりません。”
マーティン医師はHemPepというエネルギーサプリメントのマーケティングを進めるにあたりいくつかの問題点に直面しました。
このエネルギーサプリメントは、天然のカフェイン成分を活性化させるものでSourceOn社製のものは水溶性の強化カンナビノイドがバランス良く含まれています。
これらのカフェインとカンナビノイドの成分は当初はお互いに矛盾しているように見えていましたが、実際には相乗効果があるのです。
CBDはコーヒー豆や茶葉由来の成分のカフェインの効果を和らげる作用がありカフェイン摂取後に生じる興奮状態を緩和します。
出典:Leafly
マーティン医師はナイトクラブでエナジードリンクの一気飲み後、心臓発作の症状で苦しむ21歳の女性の話を聞いた後、HemPepを開発する意欲を掻き立てられました。
“ほとんんどの人は知りませんが、エナジードリンクの摂取に起因する強心剤成分の中毒症状により毎年18人が死亡しているのです。“と彼は説明しています。
気分の高揚効果の為にHemPepの調合の仕上げにマテを使っています。
マテにはビタミンB12のように認識作用を研ぎ澄ませる効果があり、パフォーマンス効果を向上させるテアクリンが含まれています。
テアクリンは抗炎症の効果を持っており、その効能はPreleveに含まれていた抗炎症剤成分のクルクミンや生姜由来の成分と類似しています。
“彼は処方に関してとても天才的だよ“とロペス氏はマーティン医師をこのように評価しています。
これまでの経験を活かして、マーティン医師はフルタイム勤務で、1週間に5,6日勤務しています。
彼は製薬産業の中で商売の利益追求と治療の間にはバランス感覚が必要であることを理解しています。
そのため、彼のオフィスの訪問者はほとんどすべてが教育に関わる人たちです。
マーティン医師は日々変遷するこの業界で未だに時代の先端を行く存在です。そして彼は自分の患者たちに生死に関わる状況のサプリメント摂取と医療行為の違いを正しく理解して欲しいと願っています。
オピオイドに関連する死亡者数の記録は増え続けていて,オピオイドマーケットや麻酔薬を処方する医療関係者らは、自分たちに対する反発に直面しています。
この反感は健康産業に影響を与えるほど、急速に広まっていて、非常に大きな波紋を広げています。
“私は今から5年後に麻酔薬が単独でマーケットに存在しているとは考えていません。”とマーティン医師は自信を持って答えます。
椅子にもたれながら、更にマーティン医師は続けます。
“今から5年後に、腫瘍治療を目的とした使用以外に麻酔薬の使用はマーケットでは存在しないと私は予想しています”
この予想は、麻酔薬の処方に関して、何かしら企みがあった場合のことで、あくまでも楽観的に考えた場合です。
鎮痛剤とエナジーサプリメントとしての用法の違いに関してマーティン医師はシンプルな行動規範を守っています。その行動規範とは世間の人々が安心して、治療を任せられる、そして可能な限り助けられる時はいつでも命を救うことです。
“私は巨額の資金を研究開の投資につぎ込みました。
私はただ、患者を殺す薬物に代わるホリスティックを確立したい一心で過去3年間で”$50万以上費やしました。
出典:Leafly
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