イギリスが10億円規模の大麻の「グリーンラッシュ」に乗り遅れたのは、合法な医療産業を犯罪扱いする無意味な禁止政策のためで、その結果、病で弱った多くの患者を見殺しにしていると専門家は警告している。

2018年5月22日に開かれる「カンナビス・ヨーロッパ」(ヨーロッパの医療大麻の利用拡大を主張する会議)に出席するために投資家がロンドンに集まるのに合わせて、大麻産業に関する専門家の第一人者たちが上記のように発言している。

投資会社カナコード・ジェニュイティのマネージングディレクターで大麻産業アナリストの第一人者であるニール・マルーカ氏はイギリスは他国に比べて合法大麻ビジネスからえられる大きな税収を完全に逃してしまっていると発言した。

「母国のカナダでの需要は旺盛すぎて、それを満たすだけの国内の成長余地がない」とも発言した。

「カナダでは2002年より医療用途での大麻利用は合法化されているが、ジャスティン・トルドー現首相が2015年の選挙戦で遊興目的の大麻使用を合法化することを公約してから産業が爆発的に拡大し始めました」(マルーカ氏)

この好意的な法的枠組みによりカナダの各企業は大麻産業を強力に推進することができた。今や医療用途に大麻の合法化を進めているヨーロッパ各国にビジネスの機会を見出している。

ドイツ、デンマーク、アイルランド、ギリシア、ポーランドなどはそれぞれ順次合法化を進めている。

「将来のヨーロッパ市場の規模は正確に予測するのは簡単ではありませんが、世界中にこんな状況にある産業は他にありません。ざっくりと予測すると10年間で全くなにもない状況から560億ユーロ(490億ポンド)になると考えています。とんでもないビジネスチャンスです。」(ステファン・マーフィー氏;ヨーロッパ大陸の大麻産業に関する情報と知見をもつコンサルタント企業であるプロヒビション・パートナーズの共同創設者)

マーフィー氏によると、オーストラリアやジャマイカ、コロンビアは医療用大麻の輸出国になることで、世界中の規制を変更することを積極的に利用しようとしている。

大半の国でいまだ非合法である医療用大麻分野の急速な成長は、筋の悪いプレーヤーが参入してくる可能性もあるが、マーフィー氏は大麻産業は急速に専門化することに自信をもっている。

「大麻ビジネス企業は他の医薬品と同様のレベルの専門化と科学的な厳格さをもつことになります。私たちに必要なのは知識のある積極的なメディアの関心と、単に大麻は怠惰なものであるというようなステレオタイプに陥らないような政治的な議論です。」(マーフィー氏)

マーフィー氏は特徴的な例として大麻産業での成長企業であるタンタスラブスの創設者でありCEOのダン・サットン氏を挙げる。

タンタスラブスは大麻産業への技術的なアプローチと持続可能性への真摯な姿勢から「大麻産業のテスラ」と称される。サットン氏は医療用、遊興用大麻双方の良い点を情熱的に喧伝している。サットン氏は大麻草に含まれる多くの化合物の研究者でもある。

サットン氏は、多くの化合物をスラスラ書きながら「私たちがここまで医学的に発見してきたことは奥深い大麻の世界の表面をなぞっただけにすぎなません。」(サットン氏)

サットン氏は遊興的な大麻の利用だけでなく、巨大な医療用大麻市場を想定している。啓蒙された非常に知識のある消費者が世界中の様々な地域で産出される高級品を選ぶ、高級ワインの世界になぞらえている。

タンタラスは最新技術を使って温度や湿度を適切に保つ、未来的な温室を建設した。その温室により農薬を一切使わずにかびや害虫を根絶して高品質な大麻を生産できる。

サットン氏はイギリスでの大麻の合法化に関する議論は「社会保守主義の残党」によりいまだに妨げられていると考えているが、状況は変わってきているとも発言した。

医薬品として利用される際に大麻が大きな効果が出ることを示す目立つ事例は、左右双方の政治的な支援を刺激することに役立つ。

1日30回以上の発作を起こす症例の少ないてんかんにかかった6歳のアイフィー・ディングレイちゃんの家族はこの数ヶ月で政治家、セレブ、そして多くの一般人から多くの支援を受けてきた。

オランダで医療用大麻オイルを処方されて発作が27日おさまった。しかしイギリスでその医薬品を利用する申請をしたところ、内務省から否認された。

大麻や、大麻草から処方された化合物は、ガンや多発性硬化症、線維筋痛症そして慢性的な痛みなどの症状を抱えた患者に良い効能を与えることがわかっている。

ディングレイちゃんの悲痛な事例だけでなく、イギリスでは圧倒的に経済的な問題もあると専門家は指摘する。海外の裕福な投資家はロンドンで資金を調達し、どこか他の合法的な市場にそれを投資しているのである。

元ロンドン市警の警察官で医療用大麻に関する企業を立ち上げたマイケル・アボット氏によると、「カナダの医療用大麻企業が成功したのは規制された合法的な医療用大麻が儲かるとわかったからです。一方でイギリスでは大麻産業を進歩させようと世界中の医療研究者の中でもトップクラスの人が動いているにもかかわらず、同じようなスピードで合法化が進みません。」

「既に医療用大麻の合法化に向けて行動を起こしている他国と同じペースを保ちたいのであれば大麻の利用と規制についての議論を進め続ける必要があります。」(アボット氏)

その一方で、22日のカンナビスヨーロッパを開催するハンウェイ・アソシエイツのパートナーであるジョージ・マクブライド氏によると、世界中の大麻産業の改革が迅速に進むことによって、「イギリスがドイツ、イタリア、カナダ、オーストラリア、その他医療用大麻の使用を認めている国々に加わるのは時間の問題でしかありません。」