イスラエルの医療大麻産業が大きく揺れている。イスラエルは医療大麻の開発でグローバルな技術的・科学的なリーダシップの最前線にいるが、政府によりそれにストップがかかった。ネタニヤフ首相が追って通知があるまで医療用大麻の輸出改革を凍結すると発表した。大麻農場の創設免許付与者の増加や医療用大麻の輸出への市場開放、そしてイスラエルの医療大麻の販売規制を含んだグローバルな競争に参加する意思を表明してわずか数ヵ月後のことだった。

イスラエルはグローバルな大麻産業で強固な地位を享受しているが、これは大麻中の有効成分であるTHC(大麻中で最も知られている有効成分で、向精神効果の原因である)とCBD(次に知られている成分で、治療効果がある)の医療的特性を最初に科学的に発見したからだ。現在イスラエルには医療用大麻を栽培する世界で最も先進的な農場がある。さらに、多くのイスラエルの技術系企業は、大麻成育方法をより効率的にして医療的特性を引き出す「特殊株」という製品を開発し、大麻の消費を促進させることで世界中の患者に医療技術を広めようとしている。それでも、イスラエル国内には相当の知識、経験、将来性があるにもかかわらず、医療用大麻のグローバルな輸出市場にいまだに参入しようとしない。政府の迷走が産業をどうしようもない状況にしており、投資すべきかどうか、投資したとしてもどうやって投資するか不確実な状況になっている。

医療用大麻は比較的新しい分野で、大半の投資家は大麻の複雑性(生育法や医療利用への適用法)や規制、また大麻の効果や利用法を改善するために開発されている先進技術をまだ十分には理解しきれるほどの知識をもっていない。多くの場合、ビジネス的な直感とこの知識不足が結びついて投資家たちは原料、つまり農場に投資をすることになる。現在医療用大麻のグローバル貿易に門戸を開いているのは6カ国ではあるものの、5年後までには西洋諸国の大半はこれに参入すると見られるので、原料の価格は総じて下落するだろう。

たとえば、3年前にはCBDはキロあたり価格60,000ドルだったが、現在は6,000ドルまで下落しているし、ますます多くの国が大麻の生産と交易に参入することで下落は続くだろう。同じことが確実にTHCなどの他の有効成分にも起こるだろう。大麻の価格下落は農家に直接的に影響する。たとえば、カリフォルニア州では大麻農場を創設するための許可が3,000件交付されたが、これは言い換えれば3,000の農家が設備に多額の資金を投資しようとしているということだ。米国ではいまだに大麻輸出入が認められていないが、先述のような状況だと、カリフォルニア州の大麻が供給過剰になり、価格がかなり下落し、市場で大麻がさばけなくなった農家が生育を続けられないことになるかもしれない。

医療用大麻の生産競争は19世紀の「ゴールドラッシュ」を連想させるが、大麻への投資は金よりもかなり複雑なものだ。したがって、世界中の多くの豊かなビジネスパーソンが大麻市場は高い収益を速やかに生むと理解して熱狂して産業に参入しているからといって、「大麻」というマジックワードに惑わされないことが重要だ。彼らの多くがこの市場がどう流動するか分かっていないので、十分な経験のない未成熟な大麻農場のような疑わしいベンチャー企業に投資をしている。農場の成熟性は、たとえば生育をより効率的にして明確な基準に従い高品質な製品を生産する技術ではあらわせない。農家が農業の秘訣を十分な経験で知っているからといって、医療用途に見合う大麻の生育法を知っているとはいえない。したがって、投資家が長期的に大麻産業で成功したいのであれば、投資対象国に限らずグローバルな医療大麻分野を理解しているパートナーを見つけなければならない。

したがって、原料のインフレも予想されるため、高い収益をうみそうな分野は、原料の医学的効用は別として、消費者に高付加価値を提供する加工製品の生産と販売である。

医療大麻分野では、未成熟な企業が我先に上場をしているのも最近の傾向だ。これは長期的には医療大麻産業全体に莫大な損害を与える問題のひとつだ。したがって、大麻ビジネスに携わっている多くの人が、プロの知識と株式の発行の正当な理由となる規制への理解を備えた企業と短期的に安易に利益のみ確保しようとして適切な裏打ちのない株式を発行する企業とを区別することは不可能だということを投資家は理解しなければならない。

それに加えて、投資が信頼できる筋からのものであることを確実にしておくことも重要だ。大麻はいまだにイスラエルならびに大半の国で危険ドラッグとして扱われているので、信頼できない筋を惹きつける可能性があることは明らかだ。投資家は必ず信頼できる企業と取引し、規制を無視しようとする企業との取引は差し控えなければならない。さもなければ自分の名声が傷つくことになるだろう。

他の分野のように一側面のみに焦点をあてて理解すればいいわけではなく、医療用大麻製品の開発には幅広い分野-疾病、生育の難しさ、規制、ビジネス-について深く理解しておく必要がある。したがって医療用大麻の投資にいちばんよいのは多くの領域でビジネスを展開している企業だろう。言い換えれば、医療用大麻の全ての局面(製薬、規制、技術開発、農業/生産の対応、加えて株式市場や販売取引での経験)を乗り切ることのできる企業である。

まとめると、イスラエルの医療用大麻産業は投資の対象として非常に優れたポテンシャルがあるが、このポテンシャルを理解するために、投資家は賢くそして相当注意して行動しなければならない。