大麻草の茂みを見て、合法のもの(幻覚作用のTHC成分が0.3%の大麻草)か非合法のものかすぐにわかるでしょうか?難しいですよね。(ちなみに写真のものは合法大麻草です)CBD生産企業への投資も同じようにわかりにくいのが現状です。
注目を集める大麻成分CBD
CBDカンナビジオールが急速に注目を集めるようになったのはここ5年のことです。きっかけはCNN医療担当のサンジェイ・グプタ支局長がドキュメンタリー番組‘Weed’のなかでその将来性について強調したことでした。バイオ医薬品会社GWファーマ社(NASDAQ:GWPH銘柄)はCBD由来のEpidiolexをFDAアメリカ食品医薬品局に新薬承認申請し、2018年中には認可される見込みです。実現すれば大麻草由来初の医薬品となり、カンナビノイドへの注目がより一層高まると考えられます。
消費者のCBDカンナビジオールへの関心は急上昇中。全米市場規模は2014年で5000万ドル 2020年には7億3600万ドルにもなる見込み。
CBD製造の方法としては自然生成も合成も可能で、様々な手法がとられます。バイオ企業のなかには合成CBD由来の医薬品を開発しているところもあります。長期的にみれば合成CBDの方が経費的なメリットは大きいのですが、効果の点で天然CBDにはまだ引けをとっているのが現状です。医薬品メーカーZynerba社(NASDAQ:ZYNE銘柄)はこれまでに2度、臨床試験に失敗しています。(失敗の原因がCBDの生成法の違いによるものかどうかは明らかではありません)合成THC(テトラヒドロカンナビノール:大麻由来の化学物質。精神作用があり日本では違法)に関して言えば、効能は天然THCとは比較にならないばかりか健康リスクがより高まることがわかっています。
天然CBDは、THCの含有量が0.3%以下と定められている産業用のアサからも抽出できます。しかし研究者の多くは、CBDの効果を最大にするにはTHCを適量混入させることが必要だと考えています。これはアントラージュ効果とよばれるものです。さらに産業用アサは比較的CBDの含有量が低いため、わずかなCBDを抽出するのにより多くのアサが必要となります。これは製品に農薬や他の不純物混入のリスクが高まることになります。
当然THCをより多く含む大麻草からもCBDは抽出できます。ビジネスの観点から言えば全米の大半の州で医療用目的のCBD製品が解禁されるなど、近年は大麻草に関する規制緩和が進んでいます。しかし未だに地産地消が義務付けられているため、州内で販売できるのは州内で産出されたCBDだけとなります。
産業用アサから生成されたCBDはこの規制からは外れます。しかしその合法性に関しては曖昧なところも多いのです。歴史的にはアサ由来CBDの原料はヨーロッパからの輸入品でしたが、2014年の農業法改正を受けて米国企業の中には一歩踏み出し、国産の産業用アサを使用してCBD抽出を行なうところも出てきました。
巨大タバコ企業が業界進出
大麻情報誌Hemp Business Journalによれば産業用アサから抽出されたCBDの市場規模は2014年で5000万ドル、2020年には7億3600万ドルにもなると見込まれています。
販売中の製品レビューを見ましょう 関係者から製品や企業の情報を集めましょう
2018年2月初め、世界的なタバコ企業Alliance One社(ニューヨーク証券取引所NYSE:AOI銘柄)は1000万ドルを投じて、ノースカロライナ州の産業用アサ栽培認可企業トップ10に入るCriticality社全株式の40%を取得しました。産業用アサ由来のCBD生産大手企業として名乗りをあげたのです。
カナダ政府から認可された医療用大麻生産者のなかには、産業用アサ由来のCBD利用をそれまでの医療用限定から全ての成人への規制緩和を見越し、相当な出資を始めた企業もあります。
CBDへの注目度の高さと、大企業の動向を受けて多くの個人投資家も大麻業界への投資に関心を寄せています。いくつかの上場企業が個人投資家にも間口を広げていますが、懸念事項も多いため特に慎重に進めることをお勧めします。
4つのチェックポイント
近年の業界の動きとして顕著なのは、産業用アサ取扱業者のCBD抽出事業への進出です。
企業を見極めるのに気を付けたいポイントを挙げていきます。
・米証券取引委員会に届け出があるか
・利益を出しているか
・CBDの抽出方法や原料の調達元を公表しているか
・製品に対する第三者評価があるか
大麻関連の上場企業への投資を検討する際、米証券取引委員会に届け出がない企業は透明性に疑問があるため避けるべきです。電子情報開示されることなく、内部からの株価操作が可能だからです。残念なことに多くのCBD関連企業は届け出をしていません。
追記:CBD関連企業と自称する企業のなかには、事業実体がないものもあり要注意です。新たな業界に参入すると宣言するのはたやすいですが、実際に価値ある製品を生産・販売していくのは容易なことではありません。
もうひとつ企業研究の際にすべきことは、実際に製品をどのように仕入れ・生産しているのかを企業のホームページや公開資料から情報収集することです。驚くべきことに多くの企業がこうした情報を開示していません。
最後に、企業が実際に取り扱っている商品の第三者レビューを参考にします。しかしこれもほとんど存在しません。また業界関係者がいれば、商品や企業について聞いてみます。もしそこで認知度が低ければ、商品の質に疑問を持たざるをえません。FDAアメリカ食品医薬品局はここ数年で数社に対して品質問題と取引違反についての勧告を行っています。大麻専門誌Hemp Business Journalに掲載されていないような企業はトップ企業とは言えません。これが投資すべき企業を見極める秘訣です。
注意すべきCBD販売業者 3社
Medical Marijuana社(店頭取引OTC:MJNA銘柄)
PotNetwork Holdings社(店頭取引OTC:POTN銘柄)
Ubiquitech Software社(店頭取引OTC:UBQU銘柄)
共通点は3社とも米証券取引委員会への届け出がないことです。
Medical Marijuana社(MJNA)
2009年上場開始。大麻関連株として取引された第1号ですが創業者は2011年に退任しています。その後会社の実権はサンディエゴに本拠地を置く起業家マイケル・ラマス氏が率いるグループに移ります。グループは2008年より産業用アサからのCBD生成を開始。2013年に監査を受け、米証券取引委員会に届け出をすることを宣言しましたが未だに実行されていません。(ラマス氏は2012年に退任。後任はスチュアート・ティトゥスCEO)
9月30日締めの四半期決算時の財務報告によれば総資本は32億ドル以上とされ、株式時価総額は3億2500万ドルも上昇したことになります。計上されている売り上げの大半は連鎖販売取引部門であるKannawayのものです。一定の周期でかなりの営業損失と1100万ドルを超える多額の転換社債を発行しており、長い歴史をもちながらも評価額ばかりが高く、財務状況は貧弱と言わざるを得ません。
PotNetwork Holdings社(POTN)
CBDプロダクツのブランドDiamond CBDのメーカーであるFirst Capital Venture社を昨年買収。自社株の宣伝に非常に力をいれていますが、これも危険信号のひとつです。
何よりも憂慮すべきなのは、商品そのものや経営陣に関しての情報が少ないことです。例えば商品をよく見たところで含有CBD量の記載はありません。実験結果なども多少は掲載していますが、多くのデータは更新されないままです。更にホームページ上にある「当社の商品はすべての州で合法であり、連邦における合法カンナビジオールCBDから生産された国産のものです」の一文は「連邦における合法」という文言に問題があります。2016年後半、DEAアメリカ麻薬取締局はCBDを連邦法において非合法のスケジュール1規制薬物に分類しています。(関連業界団体はサンフランシスコの連邦裁判所に控訴中)
さらに多くの州では産業用アサ由来のCBDの取り締まりを強化しており、特に顕著なのがインディアナ州です。会計監査を受けていない財務報告によると2017年の売上は1450万ドル、純利益21万3802ドルになります。発行済株式数5億7千万、時価総額3億800万ドル、20倍もの売り上げ、などどれひとつとして真に受けられるものではありません。
Ubiquitech Software社(UBQU)
大麻情報誌HempLife TodayとブランドCannazALL CBD Productsの経営母体で、やはり自社株の宣伝に非常に熱心です。前述の2社と比較すると絶対評価は全く高くないのですが、実際の取引額の5%にも満たない0.001ドルという価格で転換社債を発行している点を理解しておく必要があります。実際に8月31日締めの四半期では、1億4700万口以上の転換社債を発行しています。企業発表によれば11月30日締め会計年度において、初めの9か月で330万ドルの売上があり営業利益は31万6000ドルでした。しかし売上の全てがCBD関連商品によるものかどうかは明らかではありません。さらにCannazALL製品の第三者レビューはあったとしても数が少ない上に同社のホームページはCBD製品の仕入れ元や経営陣に関する情報は非常に少ないのが現状です。
有望企業 3社
一定の基準を満たしていると思われ、企業研究を深めるに値するだろう企業を3社紹介します。投資をおすすめしている、わけではありませんのでその点ご理解下さい。
CV Science社
(店頭取引OTC:CVSI銘柄)
2013年にMedical Marijuana社から独立。商品は健康食品店で取り扱われており、財務状況も健全です。2017年9月30日締めの第三四半期の売上は560万ドルで前年より90%上昇しています。営業活動によるキャッシュフローもプラス傾向で、バランスシート上も問題ありません。またFDAアメリカ食品医薬品局の規制対象にならないように合成CBDとニコチンガムの開発中です。唯一の懸念は米証券取引委員会と訴訟になっている点です。同社CEOがMedical Marijuana社からの独立時に関連して詐欺容疑の嫌疑をかけられています。この一件さえなければもっと興味をひかれるところですが、時価総額は3500万ドルとMedical Marijuana社やPotNetwork Holdings社とも引けをとりません。
ElixinolGlobal社
(オーストラリア証券取引所:EXL銘柄)
最近オーストラリアでIPO新規公開株を発行。CBD商品の評判は高く、本社を構えるコロラド州以外でも市販されています。またアサ由来のヘンプ食品を扱う会社をオーストラリアにもち、近々オーストラリア国内における医療用大麻の市場に参入する計画があります。
Isodiol International社
(カナダ証券取引所:ISOL銘柄)(店頭取引OTC:ISOLF銘柄)
アメリカ サンディエゴが本拠地ですが昨年からカナダでの取引を開始しました。産業用アサ由来のCBD商品を販売し、2017年9月30日締めの四半期決算で506万カナダドルの売上を計上しました。経営陣の多くはMedical Marijuana社出身。株式譲渡により大幅な資本増強に成功し垂直統合を実現。原料開発から行い、商品の製造・販売だけでなく製薬会社などへの原料の供給も行っています。
まとめ
産業用アサ由来のCBD関連事業は急激な成長を始めていますが、業界への投資は一筋縄ではいかなそうです。健全経営をしている数社は検討の余地もありますが、大半の企業は長期運用を目指す投資家にはリスクが高すぎるといえるでしょう。
出典:Leafly
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