ミューチュアルファンドや上場投資信託(ETF)は債券を個別にリサーチ、購入したりする手間が省けるため多くの投資家に人気があります。こうした投資信託は1つの銘柄を購入することで実際は複数の銘柄に分散投資することができるのです。

2016年までは大麻産業に特化したミューチュアルファンドやETFは存在していませんでした。しかしその年の終わりごろ、ミューチュアルファンドの一種であるアメリカ成長ファンド(AMREX)は組入れ銘柄を変更した「第2シリーズファンド」を発表。これこそが大麻産業に特化した初のリスク分散型ミューチュアルファンドとなったのです。

 

「第2シリーズファンド」の前回の運用実績は惨憺たるもので資産を増やすことはできませんでした。2018年1月31日付半期レポートでの純資産額はわずか895,009ドル。 経費さえまかないきれないものでした。レポートの最後に公表された投資先企業の中にはグロー・コンドーズ社Grow Condos、マスルーツ社MassRoots、キャナビスグロウ社Canna Grow Holdingsなどの大麻関連企業だけでなく、バリアント・ファーマシューティカルズ社Valeant Pharmaceuticals、ヴェスタス社Vestas Wind Systems、マイクロソフト社Microsoft、アボット・ラボラトリーズ社Abbot Labsなどの非大麻関連企業もありました。

 

大麻関連カナダ企業に重点

状況が変わったのが2017年、フェアーコート・アセットマネージメント社が運用するUITオルタナティブ・ヘルス・ファンドがUITグローバルREIT(不動産投資信託)より転換された時です。大麻関連企業を部分的に組入れ、同時に食物関連、機能性食品関連市場への投資も行うファンドとして誕生しました。総資産額は4月30日時点カナダドルで1039万ドル。上位10社の組入れ銘柄はアフリア社Aphria、キャントラスト社CannTrust、キャノピー・グロース社Canopy Growth、ハイドロポテカリー社Hydropothecary、メドリリーフ社MedReleaf、オーガニグラム社Organigramを含むカナダ政府認可の大麻生産大手企業が占めました。イギリスのバイオ医薬品企業で大麻由来製品を製造するGWファーマ社も上位に入りましたが、大麻関連以外ではカナダの食品会社ジェミーソン・ウェルネス社Jamieson Wellness、アメリカのピナクル・フーズ社Pinnacle Foods、同じくアメリカの保険事業会社ユナイテット・ヘルス社United Healthも含まれています。

 

ファンドマネジャーらによれば構成比率は以下の通りです。42.2%大麻関連企業、その他健康関連企業16.4%、現金16.2%、製薬・健康テクノロジー関連企業15.5%、オーガニック食品・サプリメント・機能食品関連企業10.0%。4月30日付けのレポートでは40.77%のリターンが報告されました。

 

上場投資信託(ETF)の成長

注目を集めているのはホライゾンズ・マリファナ・ライフ・サイエンス・インデックスETF(トロント証券取引所TSX銘柄:HMMJ)(店頭OTC銘柄:HMLSF)で、総資産額は現在7億3千万カナダドルにまで膨れ上がり、活発に取引されています。登場した当初は、0.75%の運用手数料を支払うことなく投資家個人が模倣して投資することができるなど、その構造に脆弱性がみられたことから批判的にみていました。しかしその後ファンドの構成は劇的に改善されたのです。

 

組入れ銘柄の上位10社はGWファーマ社(10.8%)とスコッツ・ミラクル・グロー社Scotts Miracle Gro(8.1%)の2社を除いて主にカナダ国内の大麻生産企業です。カナダ関連の分野に関心はあるが、手数料を考慮すると多くの銘柄は購入できない、あるいは株は避けたいという投資家にはHMMJは現時点では手ごろな選択肢だと言えます。

 

ホライゾンズ社のHMMJに続く商品は、個人的にはコンセプトは良いと思うのですが人気はありません。エマージング・マリファナ・グロワーズ・インデックスETFは取引も下火で資産価値はわずか1250万カナダドルです。このファンドはカナダのNEO取引所でHMJR銘柄として取引されていて、店頭株相場帳ピンク・シートの記載にはHZEMF銘柄となっています。興味深いのはアメリカの企業だけでなく、中小企業にも間口を広げていることで、さらにオーストラリアへの投資もしている点です。

 

存在感のないアメリカ企業

最近の新興ファンドの中で特筆すべきなのがシカゴのNYSEアーカ取引所でMJの銘柄で取引されているETFMGオルターナティブ・ハーベスト・ファンドです。前身はティエラXPラテン・アメリカ・リアルエステートETFですが12月に大麻関連企業中心へと方針変更。これが絶好のタイミングで、2018年初頭にメディアがカルフォルニア州大麻全面解禁に注目したことを受け急速にその資産価値を伸ばし、現在その総資産額は3億7800万ドルにまでのぼります。

 

しかし皮肉なことにこの全米初の大麻関連ETFはアメリカ国内の大麻産業とはほぼ無関係なのです。組み入れ上位の銘柄はイギリスのバイオ医薬品企業GWファーマ社が6.8%を占める以外は殆どがカナダ企業です。医薬品メーカーのコーバス・ファーマ社Corbus Pharmaceuticals以外の上位銘柄はかろうじて大麻関連企業ですが、現状では多くの企業が大麻産業とは無関係です。ベクトル社Vector Group、スカンジナビア・タバコ社Scandinavian Tobacco、ブリティッシュ・アメリカン・タバコ社British American Tobacco、アルトリア・グループ社Altria Group、フィリップ・モリス社Philip Morris Internationalなどの銘柄に至ってはある意味滑稽に感じるほどです。2018年の第一四半期の値下げ幅は11.75%となりました。

 

結論としては、カナダ国内の大麻関連企業へ投資したい場合はこの商品よりもHMMJを購入することを個人的にはお勧めします。

 

小規模ファンドはどうか

他にも規模の小さめのファンドもありますが、取引規模が限られるため検討対象からは外しています。例えばマリファナ・オポチューニティー・ファンド(NEO取引所銘柄:MMJ)、エボルブ・マリファナETF(トロント証券取引所TSK銘柄:SEED)などです。またカナビス・グロース・オポチュニティ社Cannabis Growth Opportunity Corp(カナダ証券取引所CSE銘柄:CGOC)とクィンサム・キャピタル社Quinsam Capital(カナダ証券取引所銘柄:QCA)などは運用会社でありミューチュアルファンドではありませんが、プロの投資家と足並みを揃えたい人には魅力的かもしれません。

 

結論

ミューチュアルファンドやETFの分散投資が魅力に感じる人には、投資の選択肢が幅広い大麻産業業界はお勧めでしょう。ホライゾンズ商品のポートフォリオは最良に見えますが、カナダに特化しているとは言い難いです。アメリカの大麻関連企業への投資を考えている人には今のところ魅力的な選択肢は見当たりません