カンナビスと脳の関係性は、考える必要のある議題

大麻が脳に影響を与える多様な方法を特定することは複雑で、今はまだ多くの謎の解明が始まったばかりです。もっとも複雑なことは、一見矛盾しているように見える証拠が数多くあることです。

一方では、大麻が使用者の認知機能、特に短期的な記憶を損なうという話をよく耳にします。またその一方で、大麻は神経保護剤として作用し、おそらくアルツハイマーのような神経変性疾患の発症を予防する事ができるとも聞きます。

どうしてこのような事になるのでしょうか?カンナビスは何百もの化学物質で構成された多様で複雑な植物です。その中のメインともいえる二つの構成要素、THCとCBDは、私たちに大きく違った影響を与えます。しかし、まず、エンドカンナビノイドシステム、すなわちECSの説明から見ていきましょう。

エンドカンナビノイドシステムとは?なぜそれが重要なのか?

出典:Leafly 

「人体が持つカンナビノイドシステム」としても知られているECSは、脳内および中枢神経システム(CNS)および末梢神経システム(PNS)にあるカンナビノイド受容体の集まりです。気分、記憶、生理機能、痛覚、食欲、および全体的な健康の調節において重要な役割を果たします。ECSは数多くの仕事をこなしますが、その主な目的はホメオスタシス、そして安定して健康な内部環境の維持です。

エンドカンナビノイドシステムおよび関連受容体の発見は、大麻に関する理解だけでなく、ヒトの生物学、健康および疾患を理解する上でも、重要な役割を果たしてきました。

二つの主要なカンナビノイド受容体、CB1とCB2を以下のように特定

・CB1受容体は、主に脳や神経システムに見られるが、他の臓器および結合組織からも見られる。CB1はTHCの主要な受容体であり、フィトカンナビノイド(フィトとは”植物の”という意味)、その双子のアダンダミドは、THCと酷似している、体で自然に発生するカンナビノイドの一つです。THCによるCB1受容体の活性化は、大麻の精神活性効果の一因となります。

・CB2受容体は、主に免疫システムとそれに関連する組織に見られ、大麻の抗炎症効果を調節する原因となります。炎症は多くの疾患において重要な一因であると考えられており、CB2は免疫反応として働きます。

 

大麻には、脳の受容体と相互作用する化合物のカンナビノイドが、少なくとも85種類含まれています。一般に良く知られるTHCとCBDの二つのカンナビノイドも含まれます。

大麻の精神活性への影響の大部分を担うTHCは、カンナビノイド受容体、すなわちCB1を活性化することによって脳に影響を及ぼします。THCは、何らかの刺激が妨げになり、あなたを脱線した考えへ向けさせてしまうまで、創造性を促進し、思考を増幅し、集中力を持続させます。(哲学的な会話ではいいのですが、勉学となるとそこまでよくはありません!)

驚くべきことに、大部分のTHCの非中毒性での兄弟分、および大麻の中で二番目に研究された構成物質であるCBDは、CB1またはCB2のいずれにも結びつけられるような類似性がほとんどないことが見られます。代わりに、CBDは、アナンダミドを分解する酵素を抑制することによって、カンナビノイドのシグナル伝達を間接的に刺激するようです。このことは、なぜCBDがTHCの影響の一部に対抗するように見えるのか、そして、なぜCBD濃度が高いほど中毒作用が少なくなるのかについて、部分的に説明しています。THCと同様に、CBDはまた、食欲、免疫システム、疼痛管理において重要な役割を果たします。

二相性効果・なぜ適切なTHC投与量が重要なのか

大麻の効果は個体によって異なり、投薬および調合の形態(例えば、蒸気なのか食して取り入れるのか、など)により変わります。カンナビノイド(特にTHC)は、多くの化学物質と同様に、二相性の効果があるということに注意することが重要です。つまり、低用量と高用量では、使用者に反対の効果をもたらす可能性があります。これは、なぜ人々が低用量の大麻でリラックスできると感じ、高用量ものでは被害妄想を起こすのか、ということの理由の一つです。ほとんどの医療用マリファナ療法士は、患者に低用量から始め、体の反応を見ながら、徐々に投与量を増やすようにアドバイスします。このプロセスは「自己滴定法」して知られています。

二相性の効果を考えるもう一つの方法として、治療濃度域があります。大麻は治療範囲が狭いため、悪影響をもたらす用量と、望んでいる効果を引き出す適用量の差が非常に小さいのです。慢性疼痛を例にとると、大麻と疼痛に関するほとんどの研究では、低~中用量の大麻で患者が救えると報告されていますが、用量が高すぎると痛みが悪化する可能性があります。

更に複雑なのは、THCとCBDのレベル(THC対CBDの比率)が、種類により劇的に変化することです。そのため、患者は治療のための最適な用量を見つけるため、このレベルについて意識することが重要になります。

同じことが、日常的な使用者で、特定の種類の好みがある人々にも同じことが当てはまります。

ある種類は、彼らを過度に眠く、不安を感じさせることがある一方で、別の種類は彼らにリラックスして幸せをか感じさせるようにするかもしれません。人それぞれの相性は違うので、どのように大麻に反応するかは劇的に変わる可能性があります。

適した投与量(低~中用量)

・気分の高揚、幸福感、リラクゼーション

・眠気(高いCBD濃度のものは、この効果と相反することがあります。)

・創造性の向上

・痛みが出るのを抑える

・吐き気を和らげる

・食欲を刺激する

準最適量(高用量)

・幻覚は軽度から中度

・被害妄想

・不安

・見当識障害

・痛みを強く感じる

この記事の冒頭で述べた疑問、マリファナが脳にどのように影響するかを巡って、なぜ矛盾していたり逆説的な証拠が多いのでしょうか(例えば、カンナビノイドは認知機能を「保護する」もしくは「悪化させる」など)。

マリファナ・フォー・トラウマの、トップ内科医、マイク・ハート医師は次のように説明しています。

「くやしいことに、脳の大麻消費の潜在的、長期的な利益、または悪影響を調べる質の良い人体研究はほとんどありません。しかし、大麻に二相性の急性効果があるのと同じように、長期間の使用でも同様のことが成立するかもしれません。あまりにも多く、頻繁に長い期間使用すると、暗記力の低下のような悪影響を引き起こす可能性があります。正しい量と的確な頻度は、神経保護や神経変性疾患の発生を遅らせたり予防するなど、私たちが動物での初期の研究で発見した利点を引き出すことができます。」