外傷性脳損傷、略称TBIは頭部に物理的な損傷が加わり起こる重大な脳損傷のことである。症状は、認知、行動、動作関係、会話や視力にダメージを与え、気分の変化、ひどい頭痛、そして胃腸部にも問題が起きる。

アメリカ合衆国では毎年、5万2千人の人々がTBIにより死亡、8万人が重度の障害を負っている。交通事故死亡者数(32、675人)と殺人(14、196人)を足してもその数には至らない。さらに、530万人のアメリカ人はTBIに関連した障害を持っており、これはアルツハイマー症候群患者数に匹敵するほどだ。

大麻でどのように外傷性脳損傷によるダメージを遅らせることができるのか。

すでにTBIの症状がある場合は、効果的な治療が難しいが、テルアビブ大学のヨセフ・サルネ教授などのおかげで、損傷の前かすぐ後にTHCを与えることで、大麻が長期的な脳損傷を予防できることがわかった。事実、イスラエル防衛省(IDF)では、専門家がCBDか、少量のTHCをトラウマに苦しむ敵の戦闘員を含む、IDFの兵隊に第一線の治療として与えている。

サルネと彼のチームは2013年に調査結果を発表しました。その発表とは、大麻のジョイントに含まれるわずかなTHCの量を、損傷の1~7日前、または1~3日後に与えると、長期的認知機能を保持しながら脳細胞を守る生物学的プロセスを誘導するということだ。

大麻は今現在TBIで苦しんでいる人々を助けることはできるのか?

 

出典:Leafly

イスラエルのTBIの進行を停止させた成功例を見ると、こんな疑問が出てくる。大麻は永続的にTBIの症状を止めることができるのかどうか?

逸話のように、多くの患者や彼らの家族は成功したと報告する。ある患者の娘さんがレディットフォーラムでこのように書いている。「父親はひどいTBIに何年も苦しんでいました。特に目的なく動き回り、毎日人生を嫌っていました。でも、大麻を使用するようになってから、父はすごく変わりました。いくつかの薬を飲むことを止め、もっと食べるようになり、外出し、音楽を楽しみ、映画を見て笑い、夜は寝て、不安は少なく、体の痛みも少なかったのです。まだまだ色々と変化はありました。」

もちろん、このような成功例は多く聞くが、これは逸話である。よって、すでにTBIの症状を負う患者に対する大麻の臨床試験で注目に値するような結果はでていない。運悪く、大麻の調査以外でも、可能性の高い治療、フェーズⅡ/Ⅲの臨床試験でも特段の首尾一貫した改善結果は出ていない。

大麻に焦点を当てた試験があまりできていないのも、連邦政府が長くとってきた立場によるものである。それは、「現在、大麻は医学的に使用してはいけない物質」、そして、「乱用の可能性が高い」とし、多くの研究者が官僚政治の著しい障害にぶち当たっているのだ。

それにも関わらず、連邦政府の立場があっても、大麻由来の治療が有益かもしれないことの証拠がいくつかある。

大麻使用による外傷性脳損傷の結果(UCLAメディカルセンター、2014)

446人の同様の損傷を負う患者に対する3年間の回顧的調査で、大麻を消費した患者は消費しなかった患者より生還率が高いことを発見した(消費者の生還率97.6%、消費しなかった者の生還率88.5%)。そして、「THC陽性であることと、TBIの後に生還し改善したことには重要な繋がりがあることを私たちのデータは示唆する。」と研究員たちは結論付けた。「さらなる研究により、THCの治療上の可能性について知ることができ、治療による介在が立証されていくだろう。」

内在性カンナビノイドと外傷性脳損傷(メチュラム、2007)

本イスラエルの研究が示したことは、「内在性カンナビノイドのシステムは、様々なメカニズムによりTBIに対して機能的にポジティブな能力がある。」ということだ。

神経保護による、大麻の治療上の可能性(グランディRI、2002)

この研究は実験モデルにて以下のことを示した;脳乏血や外傷性脳損傷などの深刻な神経損傷に対して、多様な大麻類は死にそうな神経を救った。

実験モデルで良い結果が出ても、いつも人間が対象ではないので、さらに調査が必要であることは間違いない。しかし、上記の研究でわかったように、大麻は様々な神経系のコンディションでも神経保護作用が働くので、さらなる研究を進めないわけにはいかない。

また、TBIは脳のようなかなり複雑なシステムに影響するので、「魔法の弾丸」のような一つの要素以上のことを巻き込んでいくことが成功の秘訣だ。

CBDはTBIに著しく効果的

THCや外傷性脳損傷を治療するための他の大麻類についてさらに学んでいる間、多くの研究者たちはCBDは安全で効果的な治療と信じている。神経防御のある無中毒性大麻類で、反炎症性、そして抗不安物のCBDは、今現在あるものの中では魔法に近い。事実、CBDはTHCより有益かもしれない。日本人の研究者は、神経保護への抵抗なしにCBDはTHCより強力な抗酸化力があることを発見しました。

カリフォルニア、サンタモニカのグリーンブリッジメディカルのアラン・フランケル医師は、少量のCBDを日々の栄養サプリメントとして摂取することは、安全で治療にかなりの補助となると考えている。「私の患者で、ひどい交通事故に遭った45歳の母親がいる。記憶喪失を経験し、それから良くなることがなかったので、私はCBDを提案した」とフランケルは話した。「そして4~6週間経ったところで、彼女は著しい改善を見せた。認知機能が改善し、記憶が戻ったのだ。」これはあくまで著しく改善した多くの患者のうちの、一例である、とフランケルは語る。

限られた研究と逸話の中で明らかに多くの期待がある中、私たちは大麻を使った数多くの治療を効果的に開発してくために、大麻類の神経生物学の理解を深め続けていく必要があります。それにより、大麻のポテンシャルの高い有益性は、今も苦しむ何百万人もの人々を助けるための革新的な新たな治療を発見し提供することができるだろう。