これまでのトップレベルの大麻研究により、人々の大麻が持つ医療的効果への理解の向上、また、「大麻の喫煙は肺がんをもたらす」などの悪意ある誤解を排除してきました。

 

しかし、それは大麻研究物語の半分に過ぎません。科学的に解き明かされた良い面の前に、残念ですが過去100年間に渡り、政府が大麻研究との戦争に掲げてきた疑わしき証拠の話から始めましょう。

 

この話は1974年、Robert Galbraith Heath博士が Tulane大学に在籍し、精神神経科を担当していた時に発表した研究結果から始まります。今日、Heath博士は同性愛者のための「転換療法」として脳深部刺激を与える(電気ショック)研究を行った、物議を醸す人物として神経科学界で有名になっています。また、合法でCIAが主導の「洗脳」薬、ブリボカプニンの人体実験も行っていました。彼の研究は非の打ちどころがないものでした。

 

そして、彼が「マリファナの有効成分(THC)が脳の回路を破壊する」という推定結果を発表した際、報道は疑いもせずに「大麻が脳の損傷の原因となる」という記事を広めたのです。

反大麻合法化を掲げていた政治家の一人、カリフォルニア州の Ronald Reagan氏は大麻合法化を考慮するにはあまりにも危険すぎる、とその研究結果を利用しました。

 

当時、多くの連邦基金による研究と同様に、Heath博士の研究にも大きな欠陥がありました。 Smoke Signals: A Social History of Marijuana の著者、Martin Lee氏はアカゲザルの極めて小規模なその研究を「科学教科書の詐欺」と言っています。

 

「気密性の防毒マスクを被せられ、Heath博士が実験で使用したサルは“定期的に”5分で63本の大麻を強制的に吸引させられました。窒息、一酸化炭素中毒でサルは脳に損傷を受けましたが、Heath博士はその結果をマリファナの毒性と結びつけました。」

 

Heath博士の研究結果は決して再現されておらず、国立毒性研究センター含むいくつかの機関が行ったその後の研究では、彼の出した結果に繋がるものはありませんでした。

 

2003年、アメリカ合衆国保健福祉省は、大麻由来の化合物が脳の損傷を引き起こす事はない、という結果だけでなく、実際は脳に効果的であるという証拠に基づき「神経保護薬としてのカンナビノイド」に関する特許を与えました。大麻の化学成分の実験結果に基づき、脳卒中、外傷による脳障害、アルツハイマー、パーキンソン病、HIV、認知症など、神経変性疾患の治療において、神経障害を抑制する効果があるとされています。

大麻草の信じられない程の医療効果が証明されている現在でも、大麻はSchedule 1の麻薬に分類されています。しかしその効果は古い研究結果でも証明されています。例えば、世界で最も古い薬局と言われている、The Divine Farmer’s Herb Root Classic (2727 BC)は、「不死の薬、便秘、女性のリラックス、リウマチ、マラリア」などの優れた治療法として大麻を推奨していたとされています。

 

現在の大麻研究においては、それらはごくわずかな大麻の効果だという事はわかっています。

 

インド麻薬委員会(1894)

1893年、インドはイギリスの統治下にあり、植民地政府は植民地で消費されている大麻(ヘンプドラッグ)の使用について考慮するようになりました。そこで、イギリスとインドの医療専門家のチームが全国に派遣され、その健康効果と社会的、道徳的影響の情報を収集しました。

 

結果は約1,200名の医師、労働者、ヨガ講師、行者、亡命者、農民、税金徴収者、密輸業者、陸軍将校、麻薬売人からの証言を記録した膨大な研究論文(3,000ページ以上)となりました。7巻ほどに渡る報告書は、2つの重要な結論、適度な大麻の摂取は無害もしくは有益となり、大麻の禁止は非常に不確かである、の裏付けとなりました。

 

「大麻のような優雅なハーブの使用を禁じ、制限することは、広範囲にわたる苦しみや煩わしさを招くことになるでしょう」と報告書は結論づけました。その後50年間、この研究結果は科学的に利用可能な研究論文となりました。

 

 The Laguardia Report ラガーディアレポート(1944)

出展:Leafly

ニューヨーク市長であった Fiorello La GuardiaはReefer Madness時代のHarry J. Anslinger氏(麻薬連邦局のトップ)によるネガティブキャンペーンに対抗し、一流の医師、精神科医、心理学者、薬理学者、科学者、社会学者を集め、入手可能な化学文献と研究結果に基づき、大麻の徹底研究を始めました。

 

The La Guardia Reportの画期的な研究は、明確に大麻の禁止はsmell test(スメルテスト、常識、妥当性に基づき、論理的であるかを判断するテスト)に失敗したと宣言し、医学の名門New York Academy of Medicineの支持を受けました。

 

「大麻はアルコールのようなもので、基本的な性格を変えるものではない」と報告書は結論づけています。「大麻自体が反社会的行動を引き起こす原因ではありません。大麻の継続使用が、アヘンの使用に繋がる証拠もありません。大麻の長期使用が、身体的、精神的、または道徳的に変性を招くことはなく、またその継続的使用による永続的に有害な影響も観察されていません。その反対に、大麻およびその派生物には、将来調査に値する潜在的な治療用途を持っています。」

 

THCの発見(1964)

Raphael Mechoulam博士が率いるイスラエルの研究チームが1964年にTHCを最初に発見し、それが大麻草の主な精神活性化合物であると認識しましたが、私達の大麻における理解に繋がるだけでなく、人体の機能への理解を深めました。

 

1980年後半には、その研究は人体のまったく新しい機能、エンドカンナビノイドシステムの発見に繋がりました。「ルートレベルオペレーティングシステム」と関係するもので、脳の指令、機能のバランスを保つ最も重要な部分の根本になります。

 

Leaflyの comprehensive explainerの記事ではエンドカンナビノイドシステムがどのように機能し、なぜ大麻の医療的効果だけでなく、一般の医学でも画期的な発見であったかを説明しています。

 

The Shafer Commission Report シェイファーコミッションレポート (1972)

2年以上に渡る大麻の研究後、Richard M. Nixon大統領によって選ばれた専門家のチームは、「マリファナ使用者またはマリファナ自体が公衆の安全に対して危険があるとは言えない」として、「少量のマリファナの流通」を含む大麻に対する刑事罰を排除することを推奨しました。

 

「刑法は大麻の使用を制限するためのものとしても、個人的な大麻の所持に対する刑罰としては厳しい方法です、、、。我々が適切な方法ではないと考えていながらも、起訴されてしまうという意味です。個人の、薬物使用にあたる害があったとしても、刑法が私的行為に立ち入る正当化をする証拠としては十分ではありません。社会が躊躇をして行わなければいけない行為です。」

 

大麻ががん細胞を縮小させる(1974)

最初、大麻のがん細胞への影響の実験は、大麻が免疫システムに悪影響を及ぼすのではないか、という実験でした。NIDAと米国がん協会から資金提供を受け、バージニア医科大学の研究員たちがマウスにがん細胞を移植し、10日間デルタ9THCを継続的に投与する実験を行いました。結果の予想は、おそらくTHCががん細胞の成長を促進するだろうと思われていました。

 

その反対に、発行されたThe Journal of the National Cancer Instituteの研究結果は、がん細胞を移植されたマウスが20日間、継続的にTHCとCBNを投与された場合、がん細胞が縮小したというものでした。

すごいですよね?

 

研究員たちはもちろんこの素晴らしい実験を続けるつもりでしたが、NIDAは研究への資金的な援助およびすべての支援を打ち切りました。結果、1974年8月18日に発行されたWashington Postだけがこの発見を小さな記事にしました。

 

大麻が化学療法による吐き気を改善する (1975)

ハーバード大学医学部の准教授、Lester Grinspoon 教授が大麻の研究を始めたのは1960年代のことでした。彼の親友、 Carl Saganに大麻の摂取をやめるように促すためでした。しかしながら、Grenspoon教授はベストセラーの著書Marihuana Reconsidered (1971)を調べるにつれ、大麻に対する悪い評価は政府が作り出したものではないかと疑うようになりました。

 

それ以来、その効果を信じる医者たちは大麻の医療的効果を訴え続けています。彼は息子のDannyが15歳で白血病を患った際の日記で、大麻についてこう語っています。

 

化学療法を行った日は、Dannyが病院から家まで嘔吐することなく、帰れることを願っていました。彼のベッドの横に、必ずバケツを用意しなければいけませんでした。しかし、初めて医療用の大麻を少量摂取して化学療法を行った日、ストレッチャーから降りた彼は、家に帰る前にサンドイッチを買いたいからお店によってもいいか、と言いました。驚きでした。

 

Grinspoon教授はBoston Children’s Hospitalの腫瘍学部で1975年(New England Journal of Medicineから発行された)、化学療法による吐き気へのTHCの効果の研究を引き継ぎました。

 

大麻が副作用なくAIDS患者を助ける(1997)

出展:Leafly

AIDSによる危機が続く中、Mary Jane Rathburn氏はナースのアシスタントのボランティアを行っていました。地元の病院を周る際、手作りの大麻「magically delicious」入りのブラウニーを無料で患者に配っていました。

 

すぐに「Maryのブラウニー」は、現在San Francisco General Hospitalで腫瘍学のトップであり、当時精力的に公共のサービスで働いていたDonald Abrams先生の目に付きました。彼女に習い、Abrams先生は自分の目で見たものを科学で証明しようとしました。つまり、大麻はAIDSからくる吐き気を主に、その症状を改善する効果があったのです。

 

1997年、長い連邦政府との戦いののち、Abrams氏はNIDAからの約1億円の支援金で、カンナビノイドのHIV感染に対する効果、の短期間の臨床実験を行うことに成功しました。

同時期に、彼は研究結果として、大麻をHIV患者が摂取した際、細胞を傷つけず、ウイルスの繁殖を抑制し、プロテーゼ抑制薬に作用せずに栄養素の摂取を促し、体重の増加につながったと発表しました。

 

大麻の喫煙は肺がんの原因にはならない(2006)

Donald Tashkin博士はロスアンゼルスにあるカリフォルニア大学の有名な呼吸器科医で、40年間に渡り大麻の肺への影響を研究してきました。彼の初期の研究を見てみると、大麻草にはタバコ同様にがんの原因となりうる化学物質、タールを保有していたため、彼は大麻草を吸うことは肺のダメージにつながると結論付けています。

 

しかし、2006年に National Institute on Drug Abuseから資金援助を受け、今までにない大規模な臨床実験を行ったところ、まったく予想外の結果になりました。大麻を頻繁に、大量に吸っても肺がんの原因にはならないというものでした。

 

これらの発見は「予想と違った結果」でした。

Tashkin博士は下記のように語っています。

 

私たちは大麻と肺がんには何らかの関係があるだろうと仮説を立てていました。その摂取量が多いほど、その可能性は高いと考えていました。しかし結果はそれらに関係性はなく、反対に保護効果のような作用が見受けられました。

 

この研究は反大麻に対する強い反論にはならなかったものの、大麻草が強い医療効果を持っていることを示しました。

 

大麻がオピノイドの過剰摂取を減少させる(2014)

大麻関係の話になると、オピオイド(中毒性のある鎮痛剤)に関する悪い噂も必ず話題になります。主に2つの違った主張を持っている人々がいます。大麻はゲートウェイドラック(他の薬物の乱用の入口)になりうる、か、大麻は中毒性なく痛みの緩和などの医療的効果がある、です。

 

初心者には、DEAが断念するほど「ゲートウェイ理論」が浸透していました。

1999年から2010年の間、州が認めた合法医療大麻でオピノイド過剰摂取による死亡率は平均25%以下でした。

 

そしてさらに重要なことに、合法的に大麻を手に入れている場合、オピオイドによる中毒症状は激減していることが分かりました。低下の理由のほとんどが、慢性的な痛みや他の症状の治療にオピオイドの替わりに大麻を使用しはじめたことでした。Donald Abrams博士による2011年の研究で、大麻がオピオイドの効果を高め、オピオイドの摂取が少量でも痛みの緩和効果は変わらず、依存性と副作用の危険性を低下させるという結果でした。

 

ニューヨーク州にあるMontefiore Medical Centerの医学助教授Marcus Bachhuber氏は、15年に渡り、この現象について患者からレポートを取っていました。2014年、1999年と2010年の間に、州が認めた合法医療大麻でオピノイドの過剰摂取による死亡率は平均25%以下という結果JAMA Internal Medicineで発表しました。その画期的な研究以後、多くの論文で、大麻が医療的に重要な役割を果たすことと、大麻が薬物の過剰摂取に繋がるという意見とが議論をしてきました。新しい研究結果では(JAMA Internal Medicineで2018年5月に紹介された記事)州が大麻を合法化した際、オピオイドの処方箋が減ったと報告されています。

 

ジョージア大学の経済学者W. David Bradford氏の論文には下記のように記されています。

 

現在のオピエート(モルヒネを含む中毒性のある鎮痛剤)の乱用、悪用は考慮すべき点があります。もし、オピエートのような副作用がなく、痛みを緩和できるのであれば、州は医療用大麻に対しての政策を考え直すべきです。

 

大麻vs. PTSD (現在も継続中)

Sue Sisley博士は、長年続けていた大麻がPTSDの治療に有効的だという研究が地元の政治家たちの間で大きな反響となった2014年、突然アリゾナ大学の教職を解雇されました。Sisley氏は現在 Multidisciplinary Association for Psychedelic Studies (MAPS)から支援を、コロラド州の環境省から約2億円の助成金を受けて、複数場所試験の主要研究者の一人として研究を行っています。

 

世界初の医療用大麻吸引によるPTSD治療の臨床実験は、76人の退役軍人に無造作に高THC、高CBD、THCとCBDの含有量が同等の医療用大麻か偽薬を摂取させることで、行われました。現在この研究は3年目に入りましたが、研究は順調です。しかし同時に、PTSDが関係するアメリカ退役軍人の自殺率は過去と比べ、依然として変化がありません。

 

CBDのてんかんへの効果(現在も継続中)

てんかんを持つ子供の両親たちからの大量の問合せに答え、アメリカ連邦政府は2014年、てんかんの治療法としてカンナビジオール(CBD)の研究を迅速に行うよう指示をだしました。カンナビジオールの潜在的医療効果の証明を政府も後押ししました。しかし、多くの研究者が大麻草、およびそれから抽出されたフルスペクトルの医療薬をテストしようとしましたが、許可された研究は厳密には大麻に含まれる単一化合物のみに限られていました。偶然にも、援助を受けGW Pharmaceuticalsが研究し、作り出した純粋なその化合物は現在、麻薬取締局が認めたCBD医療薬Epidiolexとして販売されています。

 

2018年5月、New England Journal of Medicineは現在も進行中のこの研究で、体重1㎏に対して20mgのCBDを患者に投与した際、平均で42%てんかんの症状が減少し、偽薬を投与したグループと比べると17%減少したと発表しました

 

LeaflyのRyan Basen氏によるレポートによると、これらの信頼できる結果が GW PharmaceuticalsのCBD医療薬が麻薬取締局の医療薬としての承認に差し迫っているのではないかとされています。

 

もし承認されれば、Epidiolexはアメリカで許可された最初の大麻由来の医療薬となるでしょう。麻薬取締局は以前、テトラヒドロカンナビオール(THC)に近い化合物の入った医療薬を承認しましたが、大麻草由来のCBDとはまったく異なります。

 

GW Pharamaの製品、SativexはTHCとCBDが入った医療薬で、アメリカ国外では医療薬として承認されています。Epidiolexはゴマ油に溶解されたCBDが100mg/ml、エタノール、甘味料、香料が入っています。薬に含まれるCBDは医療用のために特別に栽培され、CBD含有量の高い大麻草を使用している、とGW Pharamaは説明しています。