アメリカの大麻専門誌の先駆けであるハイタイムズマガジンが、ロサンゼルスに拠点をおく投資会社Oreva Capital社を中心とする大麻産業界の投資家らのグループによって買収されました。

買収したのはレゲエミュージシャンのボブ・マーレーを父にもつダミアン・マーレーや、大麻産業界の名だたるトップ企業がメンバーとして名を連ねる合弁企業です。サンフランシスコ・クロニクル紙のエド・ムリエッタ記者によりこの一報が伝えられました。

 

クロニクル紙の取材に対しOreva Capital社の創業者でもあるアダム・レビン新CEOは「ハイタイムズは大麻業界のコカ・コーラとでも言うべき存在です。反体制文化の象徴から現代的なメディアへ、多角的なメディア企業へ変革するチャンスと捉えています。」と答えています。

合弁企業はハイタイムズ誌の買収によって出版雑誌、ウェブサイト、大麻イベント「カンナビス・カップ・フェスティバル」に加え、大麻産業界において最大ともいえるブランド力を手に入れました。クロニクル紙による評価額は7000万ドルと言われています。

新会社幹部ダミアン・マーレー氏

レビン氏がCEOに就任したことで、Oreva Capital社が新企業の舵取りを担っていくことは明らかです。他の共同参画メンバーはマーレ―氏に加え、Denver Relief社の共同創業者イアン・シーブ氏、Mass Root社創業者イサック・ディートリヒ氏、Kush Bottles社CEOニック・コヴァセビッチ氏などがいます。

 

ハイタイムズ誌の買収は、長く同誌のトップであり、顧問弁護士であり、草分け的存在であったマイケル・ケネディ氏の死去から18カ月後のことでした。

 

1974年創刊

ハイタイムズ誌は反体制ジャーナリスト兼麻薬密輸業者だったトム・フォーケード氏によって1974年に創刊。フォーケード氏が1978年に死去すると親会社であるTrans High Corporation社(THC)が2000年に自社が解散状態になるまで、経営を受託。その後はケネディ氏をトップとして、その妻エレノラやフォーケード氏の一族が引き継いでいくことになりました。

 

ハイタイムズ誌が創刊したのは1970年代。写真雑誌の全盛期でした。Rolling Stone、Play boy, Esquire, Sport, Interview, New York, National Lampoon, Ms などと共にきわどい記事を掲載し、社会や政治が大きく変動していく時代をハンター・S・トンプソン氏など気鋭のジャーナリストらとともにアメリカ文化の最先端をリードしていったのです。

 

ハイタイムズ誌は1980年代とその後の麻薬撲滅キャンペーンという逆境も乗り切ります。しかし2000年以降はインターネットを始めとする他の情報媒体の台頭により読者離れがすすみ、発行部数が伸び悩むようになります。

 

近年ではハイタイムズ誌は新たな収入源として、全米とオランダで大麻イベント、カンナビス・カップ・フェスティバルを主催し、その額は2015年には親会社の歳入の8割をも占めるほどでした。しかし翌2016年はコロラド州当局によりデンバー市でのカンナビス・カップが中止。さらに2017年にはネバダ州とカルフォルニア州南部ではフェスティバル中の「大麻禁止令」が公式にだされ、興行としては打撃を受けました。

 

マイケル・ケネディ氏亡き後

2016年のマイケル・ケネディ氏の死後、ハイタイムズ誌はライフスタイルマガジンへと方針変更していきます。会社に深く関わってきた妻のエレノア・ケネディ氏はニューヨーク・タイムズ紙の取材に「40年間、守り一辺倒でしたがこれからは攻めの体制でいきます」と答えています。

1974年秋 創刊号

エレノアの語る「攻め」には衣類、アクセサリー、家具、さらに将来的にはマリファナを愉しむ高級ラウンジなども構想に入っていました。2016年4月発行のニューヨーク・タイムズ紙の特集記事ではTrans High Corporation社幹部が、ラスベガスにあるハードロック・ホテル&カジノと同じようなコンセプトの「ハイタイムズ・ホテル&カジノ」の計画について語っています。

 

これはハイタイムズの圧倒的なブランド力からすればゆくゆくは実現可能かもしれません。しかしラスベガスがあるネバダ州の賭博産業は、連邦政府とのトラブルを警戒して大麻関連事業全般に対し注意深くなっているのが現状です。新しい経営者としてまずは既存のメディアとイベントの興行権に重点をおくことになりそうです。

 

クロニクル紙の取材に対し新会社幹部のイアン・シーブ氏はこう答えています。「毎日取引は活発に行われています。ハイタイムズは大麻業界の一大ブランドです。そのブランドと戦略が結びつけば、世界的に有名なイベントであるカンナビス・カップと雑誌の双方を拡大していくのはたやすいことです」

出典:Leafly